高血糖の初期症状から三大合併症まで、発症のしくみと早期受診のサイン|医療法人昭新会 前田クリニック|知多郡東浦町の内科・消化器内科・眼科

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高血糖の初期症状から三大合併症まで、発症のしくみと早期受診のサイン

高血糖の初期症状から三大合併症まで、発症のしくみと早期受診のサイン

症状の有無だけで判断できない高血糖と合併症の関係


高血糖は初めのうちは気づける症状が少ない一方、血管への負担は少しずつたまっていきます。そのため、症状があるかどうかに関係なく、健診結果をもとに医療機関へ相談することが目安になります12。疲れや年齢のせいと思われがちな変化のかげで、高血糖が続いている場合もあります。


この記事では、のどが渇いたり目がかすんだりするしくみと、三大合併症の特徴、症状がないまま進む理由をまとめました。早めに相談したいサインや急ぐべきときの見分け方、血糖値やHbA1c、眼底検査の役割もくわしく説明します。


この記事の要点まとめ


  • 高血糖ははじめのうちは症状が出にくく、のどが渇く、尿がふえる、目がかすむといった変化が出ることがあります。
  • 高血糖が続くと神経障害・網膜症・腎症などにつながるため、健診の結果やふだんの検査で体の状態を確かめます。
  • 健診で高い値を指摘されたら医療機関に相談し、吐き気や腹痛、意識がぼんやりするときは早めの受診を考えます。


高血糖の症状が出るしくみと、自覚がないまま三大合併症が進む理由

高血糖の症状が出るしくみと、自覚がないまま三大合併症が進む理由

高血糖による体調の変化は、血液中のブドウ糖がうまく使われず、体内の水分バランスや血管に影響が及ぶことで現れます12。しかし、症状の強さと血管の傷み具合は一致しないため、まずは体の中で起きているしくみを把握しておきましょう。


のどの渇き・尿の増加・目のかすみは高血糖でどう起こるのか


高血糖でのどの渇き(口渇)や尿の増加(多尿)が起こるのは、血液中にあふれたブドウ糖を尿として外へ出す際、体内の水分も一緒に引き連れて排出されるためです12。尿の量や回数が増えると体は脱水に近い状態になり、失われた水分を補おうとして強い口渇が生じるしくみになっています12。


また、食事からとった糖分をエネルギーとして細胞に取り込めなくなるため、休息をとっても疲れやすさやだるさが残ったり、体重が減ったりすることがあります12。さらに、血糖値の変動によって目の中にある水晶体(レンズの役割をする組織)の水分量が変化すると、一時的にピントがずれ、目のかすみとして自覚されることもあります。これらのサインは、夜勤明けの疲労や年齢による変化と区別がつきにくいため、見過ごされやすいのが特徴です。


よくある誤解「症状が軽い=まだ様子を見てよい」が当てはまらない理由


血糖値はかなり高い状態になるまで自覚症状が現れにくいため、「症状が軽いから、まだ様子を見てよい」とは判断できません。口渇や多尿などのサインに気づいた時点では、すでに高い血糖の状態がしばらく続いている可能性があります12。


また、糖尿病と診断される手前の段階(境界型・予備群)であっても、心臓や血管の病気、慢性腎臓病などのリスクが高まることが研究で報告されています3。強いストレスや一時的な体調不良でも、その場の血糖値は上がることがあります。


そこで、過去1〜2か月の血糖の平均を表す「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」もあわせて見て、高血糖が続いているかどうかを見分けます。自覚症状の有無にかかわらず、検査の数値で客観的に状態を確認する必要があります12。


網膜症・腎症・神経障害の特徴と、気づきにくさ


高血糖が長く続くと、全身の細い血管が傷つき、細小血管症と呼ばれる合併症が起こります4。目の網膜や腎臓、神経が傷つくことで起こる網膜症・腎症・神経障害は、「三大合併症」と呼ばれます1。神経・目・腎臓の頭文字から「しめじ」と覚えることもあり、いずれも長い年月をかけて少しずつ進みます。


合併症の種類主な特徴と初期の気づきにくさ調べる主な検査
糖尿病性神経障害(し)足先のしびれ、冷え、感覚の低下などから始まりやすい。両足に左右対称に出ることが多い12。足の感覚・腱反射の確認
糖尿病網膜症(め)網膜の細い血管が傷む。かなり進行するまで視力低下や見えにくさを自覚しにくい12。眼底検査(散瞳検査など)
糖尿病性腎症(じ)腎臓のろ過機能が低下する。初期には自覚症状がほとんどなく、むくみなどは進行してから現れる12。尿検査(微量アルブミン・尿たんぱく)、血液検査

これらの合併症は、早い段階から血糖値を管理することで、発症を防いだり進行を抑えたりすることにつながります12。なお、腎臓の病気がある場合は、たんぱく質や塩分、カリウムのとり方に工夫が必要になることがあります。体の状態は人によって違うため、自己判断で極端な制限はせず、腎臓の専門医や管理栄養士と相談しながら進めます。


ポイント

三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)は、気づかないうちに進みやすいものです。症状が出る前から、ふだんの検査で体の状態を確かめておくことが大切です。


三大合併症だけではない:心臓・脳・足・歯ぐきへの影響


細い血管だけでなく、太い血管の動脈硬化が進んで起こる「大血管症」も大切な合併症です。心筋梗塞や脳梗塞、足の血の流れが悪くなる病気などがこれにあたります。「え(壊疽)・の(脳梗塞)・き(虚血性心疾患)」の頭文字から「えのき」と覚えることもあり、歯周病は「第6の合併症」と呼ばれることもあります。


神経障害で足の感覚が鈍くなると、小さな靴擦れや傷に気づかず、感染が重なって潰瘍や壊疽(組織が腐ってしまう状態)に至る足病変につながるため、日頃のフットケアが欠かせません12。高血圧や脂質異常症が重なると、血管への負担はさらに大きくなります。


また、高血糖が続くと体を守る白血球の働きが弱まり、感染症や歯周病にかかりやすくなることが知られています。血糖値の高さと膵臓がんのなりやすさとの関係を調べた報告もあります5。血糖値だけでなく、全身を見据えた健康管理が求められます12。


受診の判断基準:健診結果を持って相談したい変化と急ぐべきサイン、検査の役割

受診の判断基準:健診結果を持って相談したい変化と急ぐべきサイン、検査の役割

健診で血糖値やHbA1cの高値を指摘された場合、「次の健診まで様子を見る」のではなく、現在の症状や数値の段階に合わせて受診の時期を判断します12。通常の外来で相談したい変化と、急いで受診すべきサインを分けて把握しておきましょう。


次の健診を待たずに相談したい変化のチェックポイント


職場の健康診断などで血糖値やHbA1cの高値を指摘されており、日常生活で以下のような変化を感じる場合は、次の健診を待たずに内科へ相談する目安になります12。


  • 水分をとっても強い口渇が続く、尿の回数や量が増えた、夜間に何度もトイレに起きる12
  • 食事の量は変わらないのに体重が減ってきた、以前より疲れやすい12
  • 夕方以降や作業後に目のかすみを感じる、足先のしびれや違和感がある12

受診の際は、手元にある健診結果の用紙(複数年分あれば過去のものも含めて)を持参すると、いつ頃から数値が変化しているのかが把握しやすくなり、診察や説明がスムーズに進みます。また、血縁のあるご家族に糖尿病の方がいる場合も、体質的な背景を踏まえて早めに状態を確認しておくことが勧められます12。


嘔吐・腹痛・深く速い呼吸・意識の変化があれば急いで医療機関へ


高血糖の中には、短期間で急に状態が悪くなり、命に関わる「急性合併症」もあります。インスリンが大きく不足して血液が酸性に傾く「糖尿病ケトアシドーシス」や、ひどい高血糖と強い脱水が重なる「高浸透圧高血糖症候群」が代表的です。とても高い血糖は、それだけで昏睡(呼びかけに応じない状態)を起こすことがあります2。


なお、血糖値の数字だけで急ぐかどうかを決めず、次のような体の変化にも目を向けましょう。


強い口渇や多尿に続き、吐き気・嘔吐、腹痛、全身の強いだるさ、深く速い呼吸、呼びかけへの反応の鈍さがみられることがあります。こうした症状があれば、通常の外来予約を待たず、速やかに救急受診を検討してください。


また、すでに糖尿病の治療を受けている患者さまが、発熱や下痢、感染症などで食事がとれないとき(シックデイ)は、薬の種類によって続けるもの・休むものが異なります。自己判断で薬をやめたり続けたりせず、体調が悪いときの対応のしかたを前もって主治医と確認しておきましょう。食事がとれないときは、早めに医療機関へ連絡しましょう。


ポイント

吐き気や腹痛、意識がぼんやりするなどの症状は急性合併症のサインである可能性があり、速やかな救急受診が必要です12。


受診後に行う血糖値・HbA1c・尿検査と、診断までの流れ


医療機関では、血液と尿の検査で今の状態をくわしく調べます。血液検査では、食事をとらずに測る「空腹時血糖値」や、食事の時間に関係なく測る「随時血糖値」でその時点の血糖の高さを、「HbA1c」で過去1〜2か月の平均的な状態を確かめます12。糖尿病かどうかは、いくつかの検査の結果や症状のあるなしを組み合わせて決めます1。


あわせて行う尿検査では、尿糖だけでなく、尿たんぱくや微量アルブミンを調べることで、自覚症状のない初期の腎症が始まっていないかを確認します12。検査の結果、糖尿病の一歩手前(境界型)と分かった段階であっても、生活リズムに合わせた食事や運動の見直し、定期的な経過観察を行うことで、将来の発症や合併症に備えることができます13。グリコヘモグロビン分析装置などの検査機器を備える医療機関では、HbA1cの推移を確認しながら方針を相談していきます。


目と神経の検査はどのくらいの頻度で受けるか、仕事や運転との向き合い方


高血糖や糖尿病と診断されたら、見え方に異常がなくても眼科で「眼底検査」を受け、網膜の血管に出血やむくみがないかを確かめます12。検査の間隔は、網膜症がなければ少しあけ、見つかれば進み具合に合わせて短くしていくのが一般的な考え方で、実際の予定は眼科医が診察の結果から決めます。瞳孔を広げる目薬(散瞳薬)を使う検査では、しばらくまぶしさやピントの合いにくさが続くため、当日は自分で車を運転して帰らない前提で予定を組みます。


神経障害は、足の感覚やアキレス腱などの反射を確かめて調べます12。症状がなくても、ふだんの内科の受診のなかで足の状態をみてもらうと、変化に気づきやすくなります。


なお、目のかすみや視界の変化が気になり、通勤の運転や工場での細かな作業を続けてよいか迷うこともあるでしょう。その場合は疲れのせいと自己判断せず、内科での血糖確認とあわせて眼科で目の状態を調べておくと、作業や運転を続けるか判断しやすくなります。


知多郡内でも交替勤務や残業で休みが取りづらい方は少なくありません。症状だけでなく一人ひとりの生活背景や勤務時間帯を踏まえ、食べる物・量・タイミングを管理栄養士などと一緒に整理していくことで、無理のない通院や体調管理を続けやすくなります。


検査や診察には、ふつう健康保険が使えます(人間ドックなど自分で申し込む健診は保険が使えず、全額が自己負担です)。はじめての受診での検査費用は、3割負担で数千円ほどが一般的な目安ですが、これは当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や検査の内容で変わるので、受診先にたずねてください。


また、採血のあとにあざができたり、散瞳の目薬で一時的にまぶしさやかすみが出たりすることがあります。くわしい検査や専門の治療が必要なときは、地域の大きな病院や専門の医療機関に紹介してもらいながら進めていきます。


よくある質問


Q1. 眼底検査(瞳孔を開く散瞳検査)の頻度はどのくらいですか?


A. 眼底検査の間隔は、網膜症のあるなしや進み具合によって変わり、だれにでも同じ回数が決まっているわけではありません。糖尿病と分かったら、見え方に変化がなくても一度眼底検査を受けます。網膜症がなければ間隔をあけ、見つかれば進み具合に応じて間隔を短くするのが一般的な考え方です。


実際の受診間隔や散瞳薬を使う頻度は、血糖の推移や目の状態をもとに眼科医が判断しますので、診察時にご確認ください。


Q2. 健診結果の相談で「通院は一回だけ」でもよいですか?どう伝えればよいでしょうか?


A. まずは健診で指摘された数値の意味や、現在の症状が高血糖によるものかを確認するために一度受診し、その結果を見てから今後の通院ペースを相談する形でも差し支えありません。受付や診察時に「健診で血糖値(HbA1c)を指摘されたので、今の状態を確認したい」「交替勤務で頻繁な通院が難しいため、通院のペースも含めて相談したい」とそのままお伝えください。


Q3. 糖尿病の合併症になるまで、どのくらい時間がかかりますか?


A. 何年でなるとは決まっておらず、高血糖が長く続くほど合併症は起こりやすくなります。高血糖が続くと目の網膜や腎臓、神経が傷つき、「三大合併症」とよばれる網膜症・腎症・神経障害につながります1。ただ、健康診断で見つかる前から血糖が高かったり、糖尿病と言われる手前の段階から血管への負担が始まっていたりすることもあります3。


診断されてからの年数だけで決めず、早めに検査で確かめておくことが大切です12。


Q4. 高齢の親が糖尿病で足のしびれがあります。一人暮らしの服薬管理は訪問看護で相談できますか?


A. ご高齢の方や認知症のある方が一人暮らしをされており、糖尿病の飲み薬やインスリンの管理が難しくなってきた場合、主治医の指示のもとで訪問看護を利用して服薬確認や体調の観察を行う方法があります。通院と在宅での支援をどう組み合わせるかは、ご本人の状態や介護保険・医療保険の区分によって異なりますので、まずはかかりつけの医師やケアマネジャーへご相談ください。


参考文献


1. 糖尿病(e-ヘルスネット) | 厚生労働省. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-002

2. 糖尿病とは(糖尿病情報センター) | 国立健康危機管理研究機構. https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html

3. Schlesinger S, Neuenschwander M, Barbaresko J et al. Prediabetes and risk of mortality, diabetes-related complications and comorbidities: umbrella review of meta-analyses of prospective studies. Diabetologia (2022). PMID: 34718834 / DOI: 10.1007/s00125-021-05592-3

4. 糖尿病性腎症 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-038.html

5. Liao WC, Tu YK, Wu MS et al. Blood glucose concentration and risk of pancreatic cancer: systematic review and dose-response meta-analysis. BMJ (Clinical research ed.) (2015). PMID: 25556126 / DOI: 10.1136/bmj.g7371


前田 吉昭

医師


前田クリニック

院長

前田 吉昭

▶ 監修者プロフィール

経歴
日本大学 医学部医学科 卒業
常滑市民病院(現:知多半島りんくう病院) 内科
名古屋第一赤十字病院(現:日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院) 内科
名古屋大学医学部付属病院 第一内科第8研究室
トヨタ記念病院 消化器内科
前田クリニック 開業
資格・所属学会
日本内科学会認定医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本医師会認定産業医