母の自宅での看取り、働く娘にできる?|病院・施設も含めた選び方|医療法人昭新会 前田クリニック|知多郡東浦町の内科・消化器内科・眼科

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母の自宅での看取り、働く娘にできる?|病院・施設も含めた選び方

母の自宅での看取り、働く娘にできる?|病院・施設も含めた選び方

「家で過ごしたい」と母に言われたとき、家族が考えたいこと


退院前の面談で、母が「家で過ごしたい」と口にした。その願いに応えたい一方で、シフト勤務の間は母が一人になります。息苦しさが強まったら誰に連絡すればよいのか、見当がつかない方もいるでしょう。


この記事では、自宅・病院・介護施設で受けられる支援と家族の役割の違いを整理します。あわせて、退院前に確かめたい連絡先や費用、弟さんとの分担の考え方もまとめました。どこで過ごすかは、母の希望と支えられる体制の両方を見て選べます。


この記事の要点まとめ


  • 自宅・病院・施設で異なる医療職の関わりや家族の役割を踏まえ、本人の希望と支援体制から過ごす場所を考えます。
  • 在宅では日中の見守りや介護分担、夜間の連絡先、症状への対応を退院前に整えます。
  • 費用や通院、持病の診療引き継ぎを確認し、自宅が難しい場合の病院・施設も相談します。


自宅・病院・介護施設で、受けられる支援と家族の役割はどう違う?

自宅・病院・介護施設で、受けられる支援と家族の役割はどう違う?

三つの過ごし方で大きく違うのは、医療職がそばにいる時間と、家族が担う役割の量です。自宅での看取りは、本人の希望に加えて、症状の安定と支援体制をあわせて考えます。


三つの過ごし方を、医療・介護と家族の役割で見渡す


自宅病院介護施設
医療職の関わり訪問診療・訪問看護が定期的に訪問医師・看護師が常にいる協力医療機関や看護職員が関わる
日常の介護家族と介護サービスで分担病棟の職員が中心施設の職員が中心
夜間の対応電話相談や緊急訪問の取り決めによる病棟の職員が対応夜勤職員が対応し、医療面は施設次第
家族が担うこと見守り・介護・連絡の窓口面会、治療方針の話し合い面会、方針の話し合い、手続き

都道府県別の分析では、在宅医療へのアクセスが良い地域で自宅死亡割合が高い傾向が報告されています1。ただし、症状や生活の質への影響は研究によって差があります2。病院の緩和ケアチーム(つらい症状を和らげる専門チーム)には、症状の負担や生活の質に役立つ可能性が示されています3。介護施設の場合、看取りにどこまで対応するかは施設ごとに異なります。


自宅での看取りを考える条件は、母が一人になる時間にもある


在宅で看取れるかどうかは、余命の長さだけでは決まりません。判断材料になるのは、次のような点です。母ご本人の希望、症状の落ち着き方、日中に見守れる人がいるか。さらに、訪問診療・訪問看護を受け入れられるか、夜間に連絡できる先があるかも関わります。


介護する家族が、症状やケアについての知識と自信を持てているか。在宅で緩和ケアを受けるには、医療職の準備と、本人・家族の知識が必要とされています4。今後の経過の見通しは、遠慮せず主治医に尋ねてください。


ポイント

在宅で過ごせるかは余命ではなく、症状の落ち着き方と、日中・夜間に支えられる体制から考えます。


息苦しさへの対応や医療的な支えを重く見たいなら病院も選択肢


心不全では、体重が増えて足のむくみが強くなることがあり、悪化の兆候となります5。症状の変化が大きい時期は、入院を続ける方法もあります。病院の緩和ケアについて担当者に相談するのもよいでしょう3。


病院を選ぶことは、母の希望を軽んじることではありません。症状が落ち着いてから自宅へ戻る道を、あらためて探すこともできます。


自宅で暮らし続けたいが、家族の付き添いが難しいなら施設を調べる


自宅か病院かの二択で考えなくて構いません。介護施設は、夜間の職員体制、協力医療機関との連携、看取りへの対応、入居条件が施設ごとに違います。見学の際は「夜に息苦しさが出たらどうしますか」と具体的に聞くと、違いがつかみやすくなります。


職員が緩和ケアをどの程度理解しているかも、日々の過ごしやすさに関わります4。


自宅で看取る準備と心構えは、娘が不在の時間から考える

自宅で看取る準備と心構えは、娘が不在の時間から考える

準備は、あなたが仕事で家を空ける時間をどう埋めるかから考えると具体的になります。介護の分担、連絡の手順、本人の意思、看取り直後の流れ。この4つを退院前に整えておきましょう。


食事・排泄・夜の付き添いを、娘と弟だけで抱えない


まずは一日の時間帯ごとに、誰が何を担うかを紙に書き出してみてください。対象は食事、排泄、清潔保持(体を拭く・着替え)、体位変換(床ずれを防ぐ寝返りの介助)、見守りです。シフト勤務で空く時間帯が見えれば、訪問介護や訪問看護、福祉用具をどこに組み込むか、ケアマネジャーと相談しやすくなります。


県外の弟さんには、病院との連絡や手続き、費用の分担など、離れていても担える役割があります。家族の休息日も最初から予定に入れておくと、介護が長引いたときにも続けやすくなります。


息苦しさが強まったら、夜間は誰へ連絡する?


迷わず動けるよう、連絡の順番は退院前に決めておきます。次の内容を紙1枚にまとめておくと、連絡時に役立ちます。


  • 症状が出たときに使う薬と、使ってよい目安
  • 訪問看護・訪問診療の通常時間の連絡先
  • 夜間・休日の連絡先と、24時間体制かどうか
  • つながらないときの代わりの連絡先
  • 救急車を呼ぶと決めている状況

このメモは冷蔵庫など目につく場所に貼り、日中に訪れる家族やヘルパーとも共有してください。薬の量や回数は家族の判断で変えず、迷ったら医療職に電話で相談します。症状への対応を家族があらかじめ理解しておくと、在宅での不安を和らげる助けになります4。


ポイント

夜間に息苦しさが強まったときの連絡先と順番を、退院前に紙で残し、家族全員で共有しておきます。


母が話せるうちに、入院や心肺蘇生への希望を聞く


「家で過ごしたい」の中身は、人によって違います。最期まで自宅にいたいのか、苦しいときは入院してもよいのか。症状が強まったときの入院や救急搬送、心肺蘇生(心臓マッサージなどの救命処置)を望むかどうかを、本人・家族・医療職で話し合っておきましょう。


この話し合いは「人生会議」とも呼ばれます。気持ちが変われば、何度でも見直して構いません。弟さんと意見が分かれたときは、医師や看護師が同席する場で、母の希望と家族が支えられる範囲を並べて整理するのも一つの方法です。


自宅で亡くなったときの連絡も、退院前に尋ねておく


看取りの方針が決まっていれば、最初に連絡する相手は訪問看護師か訪問診療の医師です。医師が訪問して死亡を確認し、死亡診断書を作成する流れが一般的です。到着までのおおよその時間や、夜間の扱いも事前に聞いておきましょう。


救急搬送時に本人の心肺蘇生に関する希望が伝わらず、望まない処置につながることもあります6。一方、転倒や食べ物の詰まりといった想定外の急変は状況によって判断が変わるため、個別に指示を受けておいてください。


費用と通院の負担を確かめ、続けられる過ごし方を選ぶ


費用は、医療保険・介護保険・保険外サービスに分けて尋ねると見通しが立ちます。持病の受診や診療情報の引き継ぎも退院前に整理しておくと、通院の負担を軽くできます。


訪問診療・訪問看護・介護サービスの費用は分けて尋ねる


訪問診療は医療保険、訪問介護は介護保険、配食や見守りは保険外サービスと、支払いの仕組みは分かれています。訪問看護は、状態によって医療保険と介護保険のどちらを使うかが変わります。介護保険を使うには要介護認定の申請が必要で、お住まいの市町村の介護保険の窓口などで相談できます。


見込み額は、退院支援担当者とケアマネジャーに確認してください。調べた金額は一般的な相場であり当院の費用ではないこと、実際の費用は医療機関によって異なることを前提にしましょう。医療費がかさむ月に使える高額療養費制度も、あわせて尋ねておきましょう。


糖尿病で血糖の自己測定を続ける場合、血糖測定にかかる費用の数え方や退院時の扱いは、測定の指示内容で変わります。明細を手元に置いて、担当医療機関へ確認してください。


糖尿病の眼科受診や検便の結果は、退院時にどう引き継ぐ?


眼科を受診する頻度や、瞳孔を開いて目の奥を見る検査の頻度は一律ではありません。目の状態や病状を踏まえて、眼科医が決めます。心不全の療養中は通院そのものが負担になるため、今の時期に必要かどうかを主治医と相談しましょう。


検便で陽性になった場合も、痔があるからと原因を決めつけないでください。結果を持って消化器内科へ相談します。「今必要な受診」と「落ち着いてからでよい受診」を退院支援担当者と分けておくと、予定を組みやすくなります。


通院を一回だけ相談したいときは、どう伝える?


問い合わせの際は「退院後の病状と薬について、まず一度相談したい」と伝えれば十分です。継続して通うことを約束する必要はありません。


母の通院が難しい場合は、入院先からの診療情報提供書(紹介状)の受け渡し方法と、在宅で対応できる診療の範囲を個別に確認してください。


退院前に相談する順番と、自宅が難しくなったときの行き先


相談は、次の順番で進めると話が整理しやすくなります。


1. 病院の退院支援担当者:退院の時期、必要な医療処置、在宅生活の条件

2. ケアマネジャー:介護保険の申請、サービスの組み合わせ

3. 訪問診療・訪問看護の担当先:症状への対応、夜間の連絡体制


これまでの糖尿病の経過を引き継げるか、在宅で対応できる診療の範囲は、退院支援担当者に相談してください。当院を含め、医療機関を選ぶ際は、症状だけでなく一人ひとりの生活背景にも目を向け、医療と介護の連携体制を確かめることが大切です。訪問看護や居宅介護支援事業所についても、在宅生活を考える際の選択肢として相談できます。


自宅での生活が難しくなったときに移れる病院や施設と、その手続きも退院前に聞いておきましょう。次の退院前面談には、この記事の連絡メモを持参し、担当者と一緒に埋めるところから始めてみてください。


よくある質問


Q. 自宅で看取ると決めたら、まず何から始めればよいですか?


A. 入院中であれば、病院の退院支援担当者に「自宅で過ごしたい」という本人の希望を伝えるところから始めます。あわせて、要介護認定の申請や、ケアマネジャー・訪問診療・訪問看護の担当先探しを進めます。夜間の連絡先を退院前に紙へ残しておくと、帰宅後に迷わずに済みます。


Q. 在宅看取りの対象になる余命は、どのくらいですか?


A. 余命の長さで在宅の可否が決まるわけではありません。症状がどの程度落ち着いているか、日中や夜間に支えられる体制があるかをあわせて判断します。今後の経過の見通しは、主治医にご相談ください。


Q. 在宅での看取りを可能にする条件はありますか?


A. 目安になるのは、本人と家族の意向がそろっていること、訪問診療・訪問看護を受けられること、夜間や休日に連絡できる先があること、介護を分担できることです。介護する家族が症状やケアについて理解しているかも、在宅で過ごす際の支えになるとされています4。


Q. 糖尿病がある母の場合、退院後も眼科受診は続けたほうがよいですか?


A. 受診の間隔は一律ではなく、目の状態や病状を踏まえて眼科医が判断します。心不全の療養中は通院の負担も大きいため、今の時期に必要かどうかを主治医と眼科医に相談しながら決めましょう。


参考文献


1. がん死亡および全死因の都道府県別自宅死亡割合と医療社会的指標の地域相関分析. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/9/2/9_114/_article/-char/ja/

2. Shepperd S, Gonçalves-Bradley DC, Straus SE, et al. Hospital at home: home-based end-of-life care. The Cochrane database of systematic reviews. 2021. PMID: 33721912 / DOI: 10.1002/14651858.CD009231.pub3

3. Bajwah S, Oluyase AO, Yi D, et al. The effectiveness and cost-effectiveness of hospital-based specialist palliative care for adults with advanced illness and their caregivers. The Cochrane database of systematic reviews. 2020. PMID: 32996586 / DOI: 10.1002/14651858.CD012780.pub2

4. Murali KP, Kang JA, Bronstein D, et al. Measuring Palliative Care-Related Knowledge, Attitudes, and Confidence in Home Health Care Clinicians, Patients, and Caregivers: A Systematic Review. Journal of palliative medicine. 2022. PMID: 35704053 / DOI: 10.1089/jpm.2021.0580

5. 息切れや足のむくみ ~もしや心不全?~ | 国立長寿医療研究センター. https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/24.html

6. 人生の最終段階における医療・ケア提供のための試験運用について | 厚生労働省. https://zaitakupf.mhlw.go.jp/example/962/


前田 吉昭

医師


前田クリニック

院長

前田 吉昭

▶ 監修者プロフィール

経歴
日本大学 医学部医学科 卒業
常滑市民病院(現:知多半島りんくう病院) 内科
名古屋第一赤十字病院(現:日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院) 内科
名古屋大学医学部付属病院 第一内科第8研究室
トヨタ記念病院 消化器内科
前田クリニック 開業
資格・所属学会
日本内科学会認定医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本医師会認定産業医