
「痔のせい」と決める前に知っておきたい便潜血陽性の意味
「前から痔があるので、たぶんそのせいだと思うんです」。健康診断で便潜血陽性と言われた方から、診察室でよく伺う言葉です。症状がないなら再検査で様子を見たい。仕事や家族の予定も詰まっている。そう迷うのは自然なことです。
この記事では、次の内容を整理しました。
- 陽性が示す意味と痔との関係
- 再検査だけで済ませずに相談したい理由
- 大腸内視鏡検査の準備と費用の目安
- 知多郡で相談先と検査先を決める手順
結果を受け取った今が、相談日を決めるのに向いた時期です。
この記事の要点まとめ
- 便潜血陽性は診断ではなく、痔があっても出血の場所は便検査だけでは判断できません。
- 再検査で陰性でも最初の陽性は取り消されないため、消化器内科などへの相談を検討しましょう。
- 大腸内視鏡の準備や費用、検査先、通院日程を事前に確認し、健診結果を持参して相談しましょう。
便潜血陽性は痔のせい?結果の読み方と見落としやすい点
痔があっても、大腸からの出血とは区別できない
便潜血検査(免疫法)は、便に混じったヒトの血液成分を調べるスクリーニング検査です。陽性になる背景には、痔のほか次のような原因があります。
- 大腸ポリープ
- 腸炎
- 憩室からの出血
- 大腸がん
この検査でわかるのは「どこかで出血があったかもしれない」というところまでです。出血した場所は示しません。以前から痔がある方でも、今回の陽性が痔によるものか、腸の奥からの出血かは、便の検査だけでは見分けられません。
自覚症状がなくても精密検査を考える理由
大腸がん検診は、症状が出る前に病変を見つけるための仕組みです。早期の大腸がんやポリープは、痛みも出血の自覚もないことが少なくありません。症状がないのは、検診の対象としてはごく普通の状態です。
検診の役割は「ふるい分け」です。陽性後の精密検査で、はじめて原因を確かめる段階に進みます。陽性から二次検査まで進んで、ようやく検診が役目を果たします。ところが実際には、陽性後に精密検査を受けない方が一定数いることが、海外の研究でも報告されています1。
便潜血検査の信頼性と、陽性が示す範囲
便潜血検査は手軽で、体への負担もほとんどありません。ただし検査精度には限りがあります。病変があっても、採便した日に出血していなければ陰性になることがあります。反対に、大きな病気がなくても陽性になる偽陽性もあります。
陽性になる割合は、1日法か2日法か、受診者の年齢層などによって変わります。統計上の数字をそのまま自分に当てはめるのは控えましょう。陽性は診断ではなく、「詳しく調べる理由がある」というサインです1。
便潜血陽性の後は、再検査より先に受診を相談

1日分だけ陽性でも、再検査の陰性で済ませない
2日法で「1日分だけ陽性」という結果は珍しくありません。大腸の病変からの出血は毎日続くとは限らず、採便した日によって結果が変わることがあります。
そのため、便潜血検査をやり直して陰性が出ても、最初の陽性が取り消されるわけではありません。大腸がん検診の考え方でも、陽性の後は便の再検査ではなく精密検査へ進むのが基本とされています。
結果が届いたら、先延ばしせず受診日を決める
「何週間以内に」と一律に決まっているわけではありません。ただ、間が空くほど日々の予定に紛れ、受診の機会を逃しやすくなります。
研究でも、陽性後に内視鏡検査を受ける割合は地域や仕組みによって差があると報告されています1。受診の案内や手続きの支援があると、受診率が高まりうることも示されています2。
結果を受け取ったら、消化器内科などに相談する日を手帳に書き込んでおきましょう。検査日は、そのあと医師と相談して決めれば十分です。
出血が多い・ふらつく場合は相談を急ぐ
次のような症状がある場合は、検診後の通常の予約とは分けて考えてください。早めに医療機関へ連絡しましょう。
- 便器が赤く染まるほどの出血や、血の塊が出る
- 強い腹痛や発熱を伴う
- ふらつき、動悸、息切れなど、貧血を思わせる症状がある
- 黒っぽいタール状の便が続く
夜間や休日に強い症状が出たときは、地域の救急相談窓口の利用も考えましょう。
精密検査で受ける大腸内視鏡と、事前に確認したいこと

前日の食事と下剤、検査当日の所要時間
精密検査の中心は、肛門から内視鏡を入れて大腸全体を観察する全大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。
前日は消化のよい食事にし、種のある果物や海藻、きのこ類などを控えるよう指示されるのが一般的です。当日は1〜2リットル前後の腸管洗浄剤を数時間かけて飲み、腸の中をきれいにします。
検査そのものは20〜30分程度で終わることが多いものの、準備と休憩を含めると半日ほどみておくと安心です。平日に休みを取る場合は、前日の夕方以降の予定も軽めにしておきましょう。
鎮静剤を使う場合の帰宅手段と内視鏡のリスク
苦痛を和らげるため、鎮静剤を使う施設もあります。使った日は眠気や判断力の低下が残ることがあり、車・バイク・自転車の運転は控えるよう案内されるのが一般的です。家族の送迎や公共交通機関を前もって手配しておきましょう。
内視鏡検査では、出血や、腸に穴があく穿孔といった合併症がまれに起こることがあります。頻度は低いものの、ポリープ切除を伴う場合は、観察だけの場合より起こりやすい傾向が報告されています3。
検査費用と健康保険について尋ねる項目
便潜血陽性を受けての精密検査は、通常は健康保険の対象です。3割負担の場合も、費用は検査内容によって異なります。
- 観察のみ:検査費用を確認
- 組織検査やポリープ切除を行う場合:処置を含む費用を確認
ここでは一般的な費用について説明しており、当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や処置の内容によって異なります。診察料、検査前の血液検査、鎮静剤の有無も含めて、受診先に確認してください。
内視鏡が難しい場合と、異常がなかった後の相談
持病や腹部の手術歴がある方、検査への不安が強い方では、ほかの検査が選択肢になることもあります。S状結腸内視鏡検査や注腸X線検査、CTを用いた検査などです。ただし、観察できる範囲や、その場でポリープを切除できるかどうかが異なります。何を優先するかは医師と相談して決めましょう3。
精密検査で異常がなかった場合も、次の大腸がん検診をいつ受けるかを確認しておくと、その後の見通しが立てやすくなります1。
知多郡・東浦町で相談先と検査先を決める手順
前田クリニックに持参する健診結果と伝えたいこと
相談の際は、次のものを用意しておくと話が進みやすくなります。
- 健康診断の結果票
- 過去の検診や内視鏡検査の結果の控え(あれば)
- お薬手帳
血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は、検査の準備に関わるので必ず医師に伝えてください。痔の症状がいつ頃からあるか、排便時の出血や便通の変化、大腸の病気をしたご家族がいるかもメモしておくと伝え漏れを防げます。
当院かどうかを問わず、相談先では症状だけでなく生活背景も伝え、無理のない方針を医師と考えることが大切です。話しにくい内容も診察時に相談しましょう。持ち物や予約の方法は、受診前に確認しておきましょう。
大腸内視鏡の実施場所と紹介状の要否を確認
相談する医療機関と、大腸内視鏡検査を受ける施設が同じとは限りません。相談先を検討する際は、次の点を問い合わせておくと、その後の段取りがつかみやすくなります。
- 検査をどこで受けることになるのか
- 検査先の予約はどう進むのか
- 職場の健診機関から結果の写しや紹介状を取り寄せる必要があるか
- 検査先で紹介状が必要かどうか
相談の窓口と次の手順がはっきりしているほど、陽性後の精密検査に進みやすくなります2。
仕事と家族の予定に合わせて通院日を組み立てる
大腸内視鏡まで進む場合は、相談日、検査前の説明、検査当日、結果説明と、数回の予定が必要になることがあります。
知多郡内の移動でも、鎮静剤を使った日は運転できません。送迎を頼む日と、週末のご家族の通院の付き添いが重ならないよう調整しておくと慌てずに済みます。
最初の一歩は、結果票を手元に置いて相談の予約を入れることです。そこから先の日程は、医師やスタッフと一緒に組み立てていけます。
よくある質問
Q1. 便潜血で1回だけ陽性になる確率はどのくらいですか?
A. 陽性になる割合は、1日法か2日法か、受診者の年齢層などで変わります。一律の割合では個人の状態は判断できません。1日分だけの陽性でも、精密検査を検討する対象になります。
Q2. 便潜血検査で陽性だった場合、どうすればいいですか?
A. 便の再検査で確かめるより、まず消化器内科などに相談するのが一般的な流れです。健診結果とお薬手帳を持参し、痔の症状や便通の変化、家族歴を伝えると、精密検査の進め方を決めやすくなります。
Q3. 陽性と聞いてショックを受けてしまいました。
A. 結果を見て動揺するのは自然なことです。陽性の原因には痔やポリープ、腸炎などもあり、陽性がそのまま大腸がんを意味するわけではありません。不安な気持ちも含めて、診察時に遠慮なくお話しください。
Q4. 便潜血検査の信憑性は高いですか?
A. 体への負担が少なく、検診のふるい分けとして広く使われている検査です。一方で、病変があっても陰性になることや、病気がなくても陽性になる偽陽性もあります。結果は「詳しく調べるかどうかの目安」として受け止めましょう。
Q5. 痔の治療を先にしてから再検査してもよいですか?
A. 痔の治療だけでは、大腸からの出血の有無は確かめられません。痔の症状がある場合も、精密検査とあわせてどう進めるかを医師と相談するのがよいでしょう。
参考文献
1. Wu W, Huang J, Yang Y, et al. Adherence to colonoscopy in cascade screening of colorectal cancer: A systematic review and meta-analysis. Journal of Gastroenterology and Hepatology. 2022. PMID: 34907588 / DOI: 10.1111/jgh.15762
2. Ramai D, Pan CW, Rodriguez B, et al. Interventions for Increasing Colorectal Cancer Screening Uptake: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Gastroenterology. 2026. PMID: 41932450 / DOI: 10.1053/j.gastro.2026.02.047
3. Kindt IS, Martiny FHJ, Gram EG, et al. The risk of bleeding and perforation from sigmoidoscopy or colonoscopy in colorectal cancer screening: A systematic review and meta-analyses. PLoS One. 2023. PMID: 37906565 / DOI: 10.1371/journal.pone.0292797
常滑市民病院(現:知多半島りんくう病院) 内科
名古屋第一赤十字病院(現:日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院) 内科
名古屋大学医学部付属病院 第一内科第8研究室
トヨタ記念病院 消化器内科
前田クリニック 開業
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本医師会認定産業医
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